昨日、国際危機グループ(ICG)のWEBサイトで和平協議に関する報告書が発表されたのでリンクを張っておきます。
Southern Thailand’s Peace Dialogue: No Traction
これを読めばこれまでの和平協議の経過が詳しくわかります。
簡単に言うと、2016年2月に関係者(タイ政府、マレーシア、MARAパタ二)による経過報告のプレゼンテーションが行われ、正式な協議が近いというポジティブな印象が広がったのもつかの間、4月に和平協議に必要なTOR作成に尽力した事務局秘書官の突然の解任、一週間後の協議でのタイ側のTOR署名拒否で、軍事政権が和平協議をする気がないのではという懸念が広がりました。その後8月に再度三者協議を行い「TORを署名するための合意をした」と発表がありましたが正直、時間稼ぎのような印象をぬぐえません。なぜなら、会議の人数や使用言語という簡単な取り決め(TOR)さえ署名できないのですから。
その間に、タイ南部のプ―ケットやフアヒンなどで連続爆破事件があり、その犯人は深南部の独立派だという見方が専門家の間でされており、BRNからも犯行声明が出されたにもかかわらず、軍事政権は別の政治的意図を持ったグループの犯行だとして深南部の紛争との関連を全否定し、自らの問題を認めませんでした。
ICGも「和平対話を進める牽引力が見当たらない」という題名を付けているように、現在の軍事政権には、和平に向かうインセンティブはほぼないと言ってよいでしょう。国民投票で新憲法への信任が得られた軍事政権はプラユット首相の続投の可能性が高く、当分は状況が変わらないとの見方がが大勢です。