10月11日、BRNの新しいステートメントがインターネットで発表されました。
Prachathaiの記事。
内容はBRNの歴史、タイ政府の支配と同化政策に対する非難、独立への要望等、今までと大差ないですが、少し新しいのはタイ側が薬物を流通させてパタニの若者をだめにし逮捕する口実としているというくだりでしょうか。
対して、タイ政府はこのステートメントを気に留めていないようです。理由は、内容がこれまで何度も出たビデオの内容と変わらないこと、和平協議はすでに開始されておりBRN側が降りる(=交渉なしの武力衝突に戻る)ことはないと見ているためです。
独立が国際的にも支持されないであろうことから、BRNが取る道は武装闘争を続けるか、タイ側と交渉しかないわけですが、「何を」交渉するのかこれまで何度もこうした表明をしているにもかかわらず具体的に見えてきません。
一方、こうした見方を否定するかのように、同じ日にNIKKEIが
BRNの独占インタビューに成功しました。これによると「BRNは、和平協議をネガティブな流れと見ており、MARA PATANIには全く関与していない。しかし和平協議自体には反対しない」と言っています。特に現在の和平協議が軍政権によるものであること、5つの要求を事実上無視しているタイ政府の態度、特に国内問題だとしてマレーシア以外の国際社会を巻き込まないタイ政府の姿勢を非難しています。
8月の協議にはMARA PATANIの中に3名のBRNメンバーが含まれていました。これは別の見方をすれば、BRNが和平協議に参加組と反対組に割れているのを露呈したことになり、もし最も大きな勢力であるBRNが完全に割れ勢力が削がれれば、タイ政府側にとって有利となります。
「列車は走り出した」という言葉で表されるように、和平を目指して走りだした列車に全員がぎりぎりで飛び乗るのか、逆に列車自体を破壊して全員が飛び降りるのか、それとも一部だけが最終ゴールを目指していくのかという状態にいると言えます。一部の妥協を許さないBRNにとっては、かなりの勢力が列車に乗っていってしまうことは勢力の縮小を意味し、「残った反政府勢力」として将来の攻撃対象になることを意味し、ますます厳しい状態に置かれることになりそうです。
逆に今後の交渉の進展次第では、「最終列車に飛び乗る」こともありうるわけです。まだ協議自体が顔合わせと信頼醸成という観点から、お互いの主張を穏やかに述べるのみで意見を戦わせていません。このような初期段階では、このステートメントだけで成果がでないとか失敗であると判断するのは時期尚早と言えるでしょう。BRNのこの主張も和平協議自体は否定していません。
現在のステータスは、「和平を目指す」ことが政策として大筋で合意され、次はこの政策を「戦略」に落とす段階です。双方の和平協議チームは、和平をどのように実現するのか各グループが意見を交換しまとめるワーキンググループの作業に進むための調整をしています。次の段階でこのワーキンググループが形成されるかが和平の進捗を測る指標となると思います。