忍者ブログ

タイ深南部勉強ノート

英語、タイ語、マレー語、日本語からタイ深南部紛争地域の情報をぼちぼち整理しています。 自分用のメモなので時々書き直し、追加あります。

今回の交渉相手

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

今回の交渉相手

あまりまとまっていませんが、今度の対話の相手が誰なのかという話。

前に反政府側はMARAパタニーという傘組織だと書きましたが、MARAパタニーには今のところ6つの組織が参加するようです。そしてタイ側の主張(反政府側の発表がないため)によれば、すでにマレーシアで2回協議を行ったが、今のところ信頼の醸成のため協議は秘密裏に行う、他にも参加する意思のある組織があれば歓迎すると言っています。この中でBRNが最大組織で、現在起っている事件の実行部隊はほとんどこのBRNに所属していると言われています。

BRNの組織構造はちょっとわかりにくいですが、評議会のような機能が上にあり、そこに所属する幹部達がそれぞれ武力闘争担当だったり、政治担当だったりするようで、一人の指導者が全てを統括するような指揮命令系統になっていないのですね。だから、政治部門の担当の幹部が和平に積極的でも武力部門の幹部が反対するということが起きるわけです。

ただ、他の紛争地域でも見られるように和平交渉というのは通常政治部門から始まるわけで、その成果を見ながら武力部門が徐々に合流するといった段階的な抱合も十分ありなわけです。むしろその方が現実的で戦略的であると言えるでしょう。前回の団長のハッサン・トーイッブはまさに政治部門の幹部なわけですが、タイ政府の不手際も重なって交渉は失敗し、自派の武力部門の信頼も得られず更迭されたとみられています。

それでは今回の「秘密裏」の協議にBRNが出ていないかと言うと、もちろんそんなことはなく、タイのメディアの記事からもマスクリー・ハリという名前が出てきます。彼を派遣した人はもっと上の幹部、すなわちタイ政府が大物として指名手配しているサペーインバソーのようです。BRN評議会の事務局を務めるサペーインバソーは政治部門だけでなく当然武力闘争部門にも影響力があり、2年前の協議の時もハッサン・トーイッブを派遣したと言われています。

もちろんBRNの幹部や実行部隊の若い戦闘員の中には、ICGの報告書でもあるように協議に疑心暗鬼で和平自体に興味がないと表明しているのもいますし、そもそも独立が最終目標なのだから和平交渉自体がありえないと考える人たちもいます。一方で、ハッサン・トーイッブのような和平を結びたい派もいますし、いまだ疑心暗鬼ながらも和平の可能性を捨てきれないサペーインバソーのような幹部もいるわけです。

仮に、①3割が未来のために和平を結びたい派だとすると、②4割が和平には疑心暗鬼であるが武力闘争の未来も見えずタイ政府の出方次第では和平に傾く可能性のある派、そして残りの③3割が独立以外は認めない死んでも戦うという武闘派と言った感じです。

このうち③のグループの考えを変えさせ和平に持ち込むのは至難の業ですが、②のグループの場合まだ可能性があります。つまり和平協議が成功するかどうかは、この②のグループを取り込めるかどうかにかかっています。②のグループはタイ政府の過去の交渉姿勢や、不安定な暫定政権で真摯な和平協議などできるのかという疑念を持っていますから、ここでタイ政府側が彼らの疑念を払しょくするような真面目な対応を行えば道は開ける可能性があります。(これまでのタイ政府の交渉を思い出すと多分に楽観的な見方ですが。)タイ政府側の交渉団が言う「信頼醸成中である」という説明は、この揺れている②のグループの幹部達への参加呼びかけなのではないかと思います。

もし②のグループが和平支持に回り、平和ロードマップの共同作成に参加合流すれば、③の武力闘争グループは自動的に少数派になりますね。そうなればその先の対応もおのずと見えてくるのでしょう。


7月13日Benar News Southern Insurgents Cool Toward Peace-Talk Prospects, Report Says

拍手[0回]

PR

コメント

プロフィール

HN:
Yu
性別:
非公開
自己紹介:
本業ではありません。