忍者ブログ

タイ深南部勉強ノート

英語、タイ語、マレー語、日本語からタイ深南部紛争地域の情報をぼちぼち整理しています。 自分用のメモなので時々書き直し、追加あります。

5つの要求の意味

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

5つの要求の意味

4月29日の第2回和平交渉に先立ち、BRNが発表したビデオの中のタイ政府への5つの要求事項について、その後もタイのメディアではいろいろな解説がされていました。

その理由は、原文が非常に短く曖昧であることがあります。、

1.マレーシアはファシリテーターではなく、調停者となること。
2.協議はBRNが指導するパタニ民族とタイ政府との間で行うこと。
3.ASEAN、OIC(イスラム協力機構),NGOの監視を入れること。
4.無条件での全ての収監者の釈放、容疑者の免責。
5.我々の運動はパタニ民族の解放であり、「分離派」ではないことを認めること。

もちろん、この5か条は会議の中で意味を説明されているはずですから、当事者同士は共通の理解があるはずです。しかし、この後も詳しい内容の発表がないまま、タイ側は5項目全てを拒否すると報じられました。そこで、4の容疑者の釈放はともかく、簡単そうに見える他の要求までタイ政府が飲めないのはなぜなのでしょうか。

今回はタイ政府にとって何が問題かという視点で見てみたいと思います。

一番わかりやすいのは1と3でしょう。この二つは第三者を交渉に組み入れることを意味しています。タイ政府はこれまで深南部の問題を国内問題として、外国が干渉したり、注目されることは極力避けてきました。1と3を認めることは、この問題を国際社会に提示してしまうことになります。外国、特に欧米が介入してくるとどういうことになるか、タイ政府はよく知っています。

わかりにくいのは2と5です。これを聞いた時、私は??が頭に浮かびました。(もちろん、この地域をよく知る人にとっては難しくないのでしょうが。)

最初は5は、「分離派」ではないということは、独立を求めないということかと思ったのですが、どうもそうではないようです。この意味は、「パタニはもともとマレー人が支配する場所であり、タイは後から来て我々を支配した。パタニは一度もタイの一部であったことはないのだから、「分離」という言葉は適切ではない。我々はパタニをタイから解放する者であることを認めよ。」ということのようです。つまり、5を認めることは、タイ政府にとって、パタニはタイの一部ではないということを認めることになってしまいます。

さらにわかりにくいのは2です。この文の重点はやはり「BRNの指導するパタニ民族」という点にあり、つまり「BRNがパタニ民族(マレー系住民)を代表していることを認めよ」ということです。これは二つの点で、タイ政府にとって受け入れらないわけです。すなわち、「タイ国民であるパタニ民族を代表するのはタイ政府である」ことを自ら否定することになること。さらに、テロリストと見なしてきたBRNがマレー系住民に本当に支持されているか証拠はなく、BRNの意思=マレー系住民の意思とはタイ政府としては認められません。

・・・・ただし、もしBRNをマレー系住民の代表とするかという(本当に自由な)住民投票をすれば、タイ政府が思った以上にBRNに支持が集まる可能性も否定できません。当局からのハラスメントが怖くて、BRNへの支持を表明しない住民も多いという主張もあることを考えると、BRNのこの要求はあながち荒唐無稽なものでないのかもしれません。

こうして見ると、一番難しいと思った4が、実はタイ政府にとって一番譲歩しやすいことがわかります。実際、今日になって分離派容疑者の逮捕状の取り消しについて検討したというニュースが流れました。

ともかく、周りの反応は「まだ『交渉』ではなく、『話し合い』の段階だから、こんなものだろう」ということでした。

追記:
PULOのHPのマレー語原文と解説。
5つの要求の後の最後の言葉:
Perjuangan BRN yang boleh membawa kepada keamanan dan keadilan, dengan penubuhan sebuah negara,
(BRNの闘争が、一つの国家を創設を伴って、平和と正義をもたらすことができますように。)

拍手[0回]

PR

コメント

プロフィール

HN:
Yu
性別:
非公開
自己紹介:
本業ではありません。