忙しくて2か月も過ぎてしまいましたが、その間にもいろいろ起っていました。
和平協議方面では、事務局を務めたNakrob中将が4月20日に突然解任され、その後4月26日に行われたマラパタニよの会議でタイ側の協議団が、それまで小会議(ワーキンググループ)で双方が話し合って決めたTORへの署名を拒否したということで、プラユット首相の説明にもかかわらず、和平協議はもう続けないつもりなのかという雰囲気になっています。
Nakrob中将は、深南部問題に10年以上かかわり、インラック政権時から継続して参加する唯一の和平協議チームのメンバーでした。タイ政府に対して強い不信感を持つマラパタ二側にも対話相手として認められ、和平協議の事務的な面にも精通しており、和平プロセスにおけるタイ側の「エンジン」と呼ばれていました。
このTORというのは何なのでしょうか。何か特別重要なもののように思われがちですが、どこから何人を参加させるとか、誰を仲介役にするとか、基本はこれまでの状況をなぞるだけの内容です。しかも、「TORに署名」するのではなく、「TOR部分も含んだ会議記録に双方の確認の署名をする」だけで、要するに会議記録に過ぎず、何の法的効力もありませんし、そもそも公開するような類の文書でもありませんでした。TOR問題が大きく報道された理由は、Nakrob中将が抜けたことによる事務上の不連続が、協議団のトップのアクサラ氏による手続き引きのばしに繋がり、それが必要以上に大きく報道されたためです。
ここに二つの問題が見えます。一つは和平プロセスが過去も現在も個人に依存してきたため、その人が抜けたとたん方向が定まらなくなったり、協議自体が消滅したりしがちなこど、二つ目は、一つ目を防ぐために政策の明文化と関係者の意思統一が必要にもかかわらず、政府トップがそれを先延ばしにしてきたことです。まずくなれば、首をすげかえるというやり方が続けば、本気で和平を達成したい人は仕事ができす、日和見の人間ばかりになってしまうでしょう。
それでも、希望がなくなったわけではありません。当面表面的には停滞するでしょうが、新憲法案に対する国民投票が8月に行われること、現陸軍司令官が10月に定年になることから、また状況が変化すると思われます。