3.国内治安法(ISA法)こうしている間にも深南部の
非常事態令解除関連のニュースが入ってきますが、実際いつまでにどの郡で解除になるかはっきりしていません。
国内治安法(ISA法)は2006年のクーデター後のスラユット暫定政権で制定されました。名前からもわかる通り現在深南部の治安を統括する国内治安維持司令部(ISOC)と関連があります。
この法律は、
国内治安に影響するが、非常事態宣言を発するまでには至らない事態で、かつ長期化の傾向のある事態に関して出されます。非常事態令、戒厳令と比べ人権侵害を起こす可能性はぐっと減ります。例えば
NGO 国際危機グループ(ICG)は報告書の中で非常事態令及び戒厳令を撤回し、他の改革が実現するまですべての条項で人権が保護されている治安維持法(ISA)を適用することを提案しています。
国内治安法が今回これだけ注目されている理由は第21条の存在です。これは投降した容疑者が免責されるというもので1980年代にプレム政権の下で進められた共産党の投降を促す処置と同じものです。共産運動に参加してジャングルでタイ軍と戦闘をしていた人々はこれにより罪を問われることなく社会に再統合されました。
この成功を教訓にして、深南部でも国内治安法の第21条で分離独立派の投降を促そうとしています。しかし、当初の予想より投降する分離派が少なく、その原因についていろいろな分析がされています。ひとつは投降したくてもタイ政府に対する不信感が強く、本当に免責されるかまたは公正な扱いを受けられるか分離独立派側が疑念を抱いているという分析です。
それも理由の一つと言えるでしょう。しかし、
実はもっと分離派にとって切実で現実的な理由があります。それは第21条が適用されるのは、国内治安法が適用されている地域のみだということです。2013年2月現在国内治安法が適用されているのは、ソンクラー県の4郡及びパッタニー県の1郡の5郡のみです。この5郡は治安が安定し比較的安全なため非常事態令が撤回された地域です。
例えばナラティワート県で事件を起こして追われている容疑者が、ソンクラー県で出頭しても第21条の対象とはなりません。これが分離派が投降をためらう一番の理由です。
しかし、現実にはこれまでいくつか自主的な
集団投降の例①、②がありました。
彼らは21条の適用者ではありません。しかし彼らが自主的に投降した背景には、当局に情報を提供することでタイ政府から特別な支援を受けられる見込みがあったことがあります。
一方この記事によると実際に21条の適用を受けた者はこれまでたった2名だそうです。
もし深南部全体で非常事態令が解除され国内治安法が適用されれば分離派の投降はもっと増えるでしょう。しかし、殺人のような重大犯罪を犯した容疑者も21条で免責されるのか等今後まだ議論しなければならないことが残っています。もう一つはうまくこの免責プロセスが機能しても戻った社会が不安定なままでは意味がないということです。
個人的にはこの和平後の定着に対して我々外国人が支援できることがあるのではと感じています。
5月29日追加:
ISA法全文