夜間外出禁止令が出るという話は結局2月15日の会議で否定されましたが、
数日前から南部3県の非常事態令を解除するという話が大きなニュースになっています。
(実際に、いつ非常事態令を解除し、国内治安法を適用するかまだ決まっていません。)
この機会に深南部全体に敷かれている戒厳令、非常事態令、国内治安法について少し詳しく見ていこうと思います。
なぜなら、この3つの法の違いや、適用条件、影響をきちんと理解しておかないと、現在何が問題となっているのか、今後何を改善すべきなのかが見えてこないからです。
今回はそれぞれの法の特徴を説明し、現在どの地域にどの法が適用されているか整理します。
1.戒厳令一時的に統治権を軍隊に移行することで、3つの法のうち最も非常時に適用されます。本来は戦時・災害時などで通常の統治機構が機能しなくなった時に発動されます。このため本来なら裁判所の手続きを経て警察のみが行える逮捕を軍が行使できるようになるため恣意的な逮捕が可能となります。
そして軍人がこの法の適用下で法に違反した場合(例えば一般人に対して人権侵害をした場合)、彼は通常の裁判ではなく軍法廷で裁かれることになります。これは軍にとってとても有利なことです。
戦時中ぐらいしか経験のない日本と違いタイでは戒厳令はよく発令されています。
最近では2006年のクーデター時に全国で発令されました。
そして、長期にわたる戒厳令というのもあります。ほんとんど意識されていませんが、
タイでは現在でも全ての国境に接する郡で戒厳令が敷かれています。そして、深南部で問題となっている戒厳令があります。
2013年2月現在、ヤラー、ナラティワート、パッタニーの33郡(全郡)に戒厳令が敷かれています。その期間は、紛争が激化した2004年1月から2005年7月にタクシンによって非常事態令に変更されるまでの間と、2006年9月のクーデター後から現在までの計9年間に及び、今も解除されないまま続いています。タイの戒厳令で一番問題となっていることは、以前
ディープサウスウォッチで訳した記事にもありましたが、
容疑者の7日間の拘留が可能だということです。この場合の容疑者とは、軍が容疑者と見なした人物であり、証拠や裁判所の許可(警察の同行さえも)必要ありません。つまり、今回話題となっている
非常事態令が解除となっても戒厳令が解除されない限りこの問題は残ることになります。