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タイ深南部勉強ノート

英語、タイ語、マレー語、日本語からタイ深南部紛争地域の情報をぼちぼち整理しています。 自分用のメモなので時々書き直し、追加あります。

「仮想世界」からの実感 - 人々は分断されてしまっている。(DSW 2009-04-01)

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1. 無題

タイ語にあって英語にない部分、最後の提案者の発言の中で、「逆にNGOは発言の機会があまりない」というものがあります。

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「仮想世界」からの実感 - 人々は分断されてしまっている。(DSW 2009-04-01)

ディープサウスウォッチ

「我々は分離主義の問題を解決しようとしてきた。しかし、この努力は不幸なことに社会をさらに分割する結果になってしまった。我々は人々を本質的に分断してしまった。」

注:2009年1月18日、ソンクラー県ハジャイ市のノボテルセントラルホテルにて、ディープサウスウォッチ(DSW)と南タイジャーナリスト協会が協働で南タイの紛争にかかるセミナーを開催した。
タイトルは「南部紛争の5年間:戦争と知識、混乱、そして現在何が問題か?」である。

地域の人々の関係と感情

「我々は分離主義の問題を解決しようとしてきた。しかし、不幸なことに我々の努力は社会をさらに分割する結果になってしまった。我々は人々を本質的に分断してしまった。」
ブレー シリサクダムクン博士
シラパコーン大学考古学部

「南部国境県のイスラム教徒とタイ人の仮想コミュニティーでの感覚」

2007年3月14日、反乱分子と見られる輩が、ハートヤイ(ハジャイ)からヤラー県ベトン郡へ移動するミニバスに乗っていたタイ仏教徒の乗客9名を射殺した。この悲劇が起きて2日のうちに9つのウェブサイト討論フォーラムに1317件の投稿が寄せられた。最初の投稿はタイ国家への憎悪を表明していた。このためこの人物が素性を明かしていないのにもかかわらず、まるでテロリストからの投稿のように見えた。

続く投稿はタイにおけるテロリストがイスラム教徒であると非難するものであった。多くがイスラム対する敵対心を表し、この地域の仏教徒が適切な保護を受けられず生活しなければならないことに対して強い同情を示した。タイ政府が仏教徒よりもイスラム教徒を保護していると述べるものもあった。そして政府がイスラム教徒と和解を模索する必要はないと主張した。

フォーラムの内容の多くは殺人者に対する怒りと敵愾心を示していた。そして、多くのフォーラムの参加者たちはタイ政府が何のリアクションも起こさないのを不思議に思ってさえいた。これがタイ政府が、南部国境三県において少数派の仏教徒を犠牲にして多数派のイスラムの歓心をを買おうとしている証拠だと言うものさえいた。

怒りを憎悪の感情を露わにするものの中には、イスラム教徒がタイ国家を愛していないと主張する他の投稿から影響を受けていると思われるものもあった。同じようにいくつかのフォーラムでは参加者が、イスラム教徒がなぜタイから分離したがるのか、そして他の宗教背景を持つ人々を傷つけるのか全く理解できないと書いている。

投稿者の多くが南部の状況に対して暴力を伴う高圧的な戦術で対抗すべきだとも提案した。例えば殺人者は首をはねるべきだと言うものまでいたし、他にも残酷な罰を下すべきだと主張したものは多かった。さらに、残酷でイスラムを侮蔑したジョークも多くの投稿の中に見られた。

地域の平和構築への懸念を示した投稿もあったが、そういった投稿でもタイからの分離を要求するグループは非愛国的だと非難したものがあった。自分達をタイ人とは別個のものとみなし、タイからの独立を望むこういた輩は死に値すると述べたものさえあった。

こうした非常に感情的な投稿は、タイ人の多くが国境地域の社会的多様性を受け入れることができないことを示している。タイの主流派として受け入れられているものと相反する考え方は激しく見下されるのだ。

この他に地域のタイ仏教徒の声が伝えられていないとする投稿もあった。しかし、フォーラムにざっと見通して見てもイスラム教徒が参加している様子もないのである。

おそらく最も興味深いことは、現在フォーラム投稿者の中で広まっている認識はタイ人兵士と警察官が暴力の第一の犠牲だということである。しかし、シーソムポップ博士の調査では、イスラム教徒と仏教徒の負傷者の数は同じくらいであるし、犠牲者の大多数は市民であった。つまり、これらのウェブサイトに投稿されたタイ仏教徒のイスラム教徒に対する燃え上がる怒りと恨みは、タイのメディアの報道範囲の不公平さを一部反映している可能性があるのである。

要するに、我々は分離主義の問題を解決しようとしてきたが、不幸なことに我々の努力は社会をさらに分割する結果になってしまった。我々は人々を本質的に分断してしまったのである。

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調査結果の見方

「ブレー博士個人の心情が、特定のウェブサイトフォーラムの投稿をもって彼女の信じることの根拠としたのではないか。彼女の分析は彼女個人的な考えを反映したものか、またはフォーラムの投稿の客観的な解釈なのか議論が分かれるところである。」
ピヤ キッタヴォーン助教授、プリンスオブソンクラー大学パッタニー校政治社会学部

プレー教授の指摘と解釈に関して、これがウェブサイトフォーラム全般の意見を正確に反映したものか、それとも調査者の個人的な意見を反映した可能性はないかという重要な疑問がある。ブレー博士個人の心情が、特定のウェブサイトフォーラムの投稿をもって彼女の信じることの根拠としたのではないか。彼女の分析は彼女個人的な考えを反映したものか、またはフォーラムの投稿の客観的な解釈なのか議論が分かれるところである。

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「激しい感情を吐き出せば彼らはすっきりするだろう。しかし、このような投稿は疑いもなく紛争解決への大きな障害となる。」
アブドゥル アジズ ヤニー
南部国境県ポンドック機関クラブ会長


激しい感情を吐き出せば彼らはすっきりするだろう。しかし、このような投稿は疑いもなく紛争解決への大きな障害となる。例えば、すべてのイスラム教徒がテロリストであるという考え方は―特に国家と対峙しているものにとってーイスラム教徒を怒らせるという点で不穏だし危険である。さらに事態を悪化させるだろう。従って、こういった感情を表ししたり公にすることを避けることが重要である。特に相手側はは疑問の余地なく感情を害するだろう。

一般論として、マレームスリムのアイデンティティーをもっと多く認めることが重要である。シヤェー(タイ)とメラユ(マレー)という単語は 過去にマレー語話者の間で普通に使われていた。今日でもマレー語話者がこの言葉を使うのを聞くことができる。この二つの言葉 シヤェー(タイ)とメラユ(マレー)は普通の言葉であるし、タイ仏教徒とマレームスリムという意味である限り問題とすべきではない。 タイ政府と全てのレベルの政府職員が マレームスリム文化を公式に認めるようになることを望む。例を取れば、村の名前にタイ語名ではなくマレー語名を使用することである。それが、タイ文字表記やローマ字表記であってもそれは全く問題ない。

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「これこそが相手の主な狙いだ。」
イスカンダル タムロンサッブ
地元知識人


これまで多くの政府役人が問題解決のための政府の戦略を議論してきたが、彼らは相手側やプレー教授のような代弁者に関心を払ってこなかった。相手の苦情に耳を傾けない政府の態度が、政府に対する相手側の戦略を見えなくしてきた。

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暴力からの回復と影響の軽減。支援の仕事

「暴力事件のデータと傾向を見れば確かに改善しているように見える。しかし、各部分の詳細にもっと注意を払っていかなければならない。」

ウォラシット ソンシーウィチャイ博士
プリンスオブソンクラー大学薬学部

パッタニー県カポー郡の郡保健所が放火されたことはまったく思いがけないことであった。人道援助ワーカーと同じように医療業界の地元職員達はショックを受けた。彼らのほとんどは自分達は暴力の標的にはならないと考えていた。この攻撃の結果、医療組織とNGOはより安全は手続きを採用する必要を感じ始めたのである。そして彼らは紛争に見舞われた国々で安全対策改善に努力した医療従事者等の経験を参考にしたのである。

地元で働く人々が開発したより効果的な安全対策の一つは、暴力事件の詳細を収集して整理するシステムであった。 2007年初頭、保健省とプリンスオブソンクラー大学は、暴力事件による負傷者により適切に対応するために、データ収集のVISシステムを開発した。 例えば、このVISシステムを見ると多くの犠牲者が高齢者と15歳以下の子供であることがわかる。この結果により医療従事者は、この年齢層の人々に特別配慮した治療を準備するようになった。このシステムは現在南部紛争の影響を全く受けていないサトゥーン県でも使われている。

南部の状況は改善されたかという質問に関しては、暴力事件のデータと傾向を見れば確かに改善しているように見える。しかし、各部分の詳細にもっと注意を払っていかなければならない。そうすれば、状況が以前として多くの地元民に負の影響を与えていることが明らかになるだろう。

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「過去においては、深南部コーディネーションセンターは支援を受ける側だった。しかし、今は人々を支援することに焦点を当てたいと考えている。
メッタ グニン博士
深南部コーディネーションセンター(DSCC)

2006年、深南部コーディネーションセンターは、暴力事件が激的に増加した2004年以降暴力事件の結果未亡人となった女性が310余名にのぼることをを発見した。彼女たちが直面している心理的、経済的困難のため、センターは、暴力の犠牲者である彼女達を支援し力づけて、その生活を改善させることが極めて重要であると考えた。

センターは、暴力から負の影響を受けている子どもたち、特にパッタニー県の子どもたちのために活動してきた。ここ数年、児童虐待のケースの報告が増えてきている。いくつかのケースでは家族が子どもがセンターを訪問するのを好まない場合がある。センターに入ってくる子どもたちの60%が彼ら自身の親によって虐待されてきたことがわかっている。こういった子どもたちは他の子どもと比べ深刻な心理的問題を抱えている。2008年にはこれは精神衛生局との協力でこれらの子どもたちに対するリハビリを行う試みが行われた。これまで72名の児童を訪問し支援した。

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「次の5年の間に暴力に大きな影響を受けた人々に対する質の高いリハビリテーションサービスを作っていく必要がある。」
スパット ハスワンナキット博士
ソンクラー県チャナ病院長

「南部国境県における患者治療の改善への提案」

病院は過去5年の暴力事件の増加に伴い多くの患者を受け入れてきた。不幸なことに、これは病院スタッフが膨大な数の患者ニーズと直面することをしばしば意味した。患者が生き延びるためによりよい治療を受けることが決定的に重要であるにもかかわらず、適切なケアや治療が行われることはまれであった。

今日病院は多くの患者を治療することを優先するのが当然であり、多くの患者はけがの経済的補償を受けられるだろうが、たくさんの患者を治療することが強調されているためにモラルサポートがほとんどない。

次の5年間に患者の治療の質を改善する必要があるし、これは政府の監督の下に行われるべきである。治療の質の向上に関係する様々なセクターと政府機関を通して経済的支援が獲得できると思う。他には地元の精神科医をもっと雇用して、現在進行中の心理的トラウマに対するサポートを行うようにする必要がある。

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暴力後の支援の分析
ペットダーオ トミーナ博士
公衆衛生保健省精神衛生局第15地区精神衛生センター長

南部国境三県における犠牲者は支援を受けるために政府職員とコンタクトを取ることが面倒だと感じている。 それは犠牲者達は普段から地域のNGOの支援を受けているためである。政府は、自身の不適切な支援体制を補うためにこうしたNGOを信頼して活用することが可能だろう。

問題は、住民が暴力で負傷を負った場合に受けられる可能性のある支援について、現在政府が南部の住民に効果的に広報していないということがある。

政府と関係機関は犠牲者に対してもっと意味がある効果的な支援をするべきである。これまでそのほとんどが経済的補償に集中してきた。

政府には犠牲者が支援を受けるためのいわゆる「ワンストップサービス」 センターがない。
ソース:
http://www.deepsouthwatch.org/node/284(英語)
http://www.deepsouthwatch.org/node/276(タイ語)

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1. 無題

タイ語にあって英語にない部分、最後の提案者の発言の中で、「逆にNGOは発言の機会があまりない」というものがあります。

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