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ディープサウスウォッチ
プリンスオブソンクラー大学紛争と文化多様性研究センター(CSCC)
プリンスオブソンクラー大学に最近設置された紛争と文化多様性研究センター(CSCC)の研究者グループは南部国境県における調査を実施した。国家学術研究会議に支援されたこの調査プロジェクトの目的は、暴力に見舞われた地域における住民の社会的、経済的、政治的状況に対する考え方についてより深く理解するためである。
2009年2月から3月にかけて、研究チームはパッタニー、ヤラー、ナラティワートとソンクラー県の4郡の1878人の対象者からデータを集めた。このうち51%にあたる956人が男性、49%にあたる916人が女性であり。 88%にあたる1657人がイスラム教徒、12%にあたる199人が仏教徒である。この割合は地域の人口の実際の状況とだいたい一致している。
個人の経済状況にについての質問では、88.2%にあたる1143人が 十分な収入があるとと答えた。 37.4%の699人が適正な収入がないと答えた。このことから、現在のタイ経済問題と深南部の混乱があるにもかかわらず、イスラム教徒が多数派のこの地域の大半の人々は、自分達には適正なレベルの収入がある、または少なくとも生活するのに十分な収入があると考えていることがわかる。
しかし、地元コミュニティーが直面している最も重要な問題についての質問では、91%が失業と答えている。それに違法薬物の問題が続く。
これらの結果から、現在深南部の住民が直面している主な問題は経済と社会問題であることがわかる。 こういった見方は地域を悩ませている失業や薬物乱用の急増を‐ 特に若者の間で‐ 反映している。しかし、驚いたのは反政府活動が住民の間で一番大きな問題ではなかったことである。回答者はこの問題を3番目に重要な問題としてあげている。
つまり、現在の紛争と暴力は地元の目からは大きな問題であるけれども、失業問題や薬物乱用問題としばしば結び付けられる経済と社会問題の方がより切迫した問題なのだ。
紛争と暴力の主な原因は何であると思うかという質問には、回答者の23.6%が公務員による不当な扱いが一番の原因であると答えた。逆に、23%の回答者が反政府勢力側に由来すると答えた。これ以外の回答は、司法制度(16.1%)、国家の暴力(13.5%)、開発の遅れによる貧困(8.5%)、若者の教育不足とイスラム教徒の大家族制の結果の人口過剰(8.5%)、自治権(4.5%)、その他(1.9%)、資源管理の貧弱さ(0.4%)である。
紛争と暴力に関係する質問では、アビシット首相の現政権(民主党)に対して信頼と確信を持っているかどうか聞いた。41.5%がある程度信頼している。35%が信頼している。19.3%が非常に信頼していると答えた。
これは現在の国家レベルの政治騒乱や経済の停滞、南部国境県の不安定な治安状況にもかかわらず、深南部の多くの人が現在の政権をある程度信頼していることを示している。
しかしこのデータは誤解を招く恐れがあるかもしれない。なぜなら、アビシット政権は深南部の紛争と暴力を解決することができるかという問いには、回答者はそれほど楽観的ではないからだ。50.8%が政府が問題を解決できるかわからないと考え、25.8%は状況を変えることはできないと答えている。解決できると答えたのはわずか21.1%しかいない。
もう一つの重要な質問として、南部国境県行政センター(SBPAC)を、現在の職務に加える形で、タイ国の法的行政的単位に格上げするという政府の計画に対する意見に関するものがある。この政策が現在の不穏な状況の解決の助けとなるかという問いには、42.1%がある程度できると答えた。解決できると答えたのは27.2%で17.8%が全く解決できないと回答した。
地域の治安維持に関する質問では興味深い回答となった。多数の軍警察が駐留すべきかという質問には、23.6%が絶対に反対と答えた。21.8%が反対、15.7が賛成、4.8%が強く賛成であった。およそ24%が国境県に多数の軍警察を引き続き駐留させるという政府の決定にある程度の支持を表明した。
この質問で反対派を合計すると45.5%となる。別の言葉で言えば、実に半分近くの回答者が激しい暴力が発生している地域での多数の治安維持部隊の駐留に反対しているのだ。
結論として、住民の政治的見解の調査では深南部の住民のほとんどは現政権に信頼を置いている。しかし、それはアビシット政権が深南部の紛争を解決できるという点での信頼とは限らないようである。このような態度は、国レベルの政治的不確実性から来る影響の結果かもしれない。深南部のほとんどの人達は、不安定な政権が続いたために歴代の政権が明確で効果的な政策を実施する能力がないと不満に感じている。
注: この世論調査の結果は2009年4月29日プリンスオブソンクラー大学のCSCCが行ったプレス会議で発表されたのが最初である。
http://www.deepsouthwatch.org/node/296 (英語)
http://www.deepsouthwatch.org/node/295 (タイ語)
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メモ:下記の英語の章はタイ語版に存在しなかったので割愛。
But for some individuals in this region that has had a long and turbulent history with Bangkok, more significant political changes at the regional level are necessary to begin to quell the recent wave of conflict and violence that has plagued this area for more than five years now.