軍人事異動の季節になりました。タイではメディアが軍人事の予想をして政治状況を分析するのが恒例となっています。
タイだけではなく東南アジアはどこの国でもそうですが、軍事政権でなくても軍が利権を握って政治に介入したり、退役軍人が政治家になることが多く、軍の影響力は大きいものとなっています。
特にタイでは2006年のクーデター後に軍事予算が大幅に増えるとともに、政府が軍人事に介入できないように仕組みが変えられました。そのため、タクシン派政権はいつも、再びクーデターをさせないためにいかに軍をコントロールできるかに心を砕いてきました。
今回の目玉は、定年退職する国防次官と海軍指令官のポジションに誰がつくかということです。この二つは国軍人事委員会のメンバーなので、次の人事異動の際に大きな影響力を行使できるためです。ここでタクシン派が多数派になると、政府による軍のコントロールが可能となります。逆に政府の意見が全く通らずこのポジションにタクシン派がつけないと、現政権は軍との力関係で弱いということです。
※国軍人事委員会(現在は国防相=インラック首相、国防相補佐=ユタサック氏、国防次官、国軍最高司令官、陸海空の3人の司令官の計7人)
大筋では、定年退職するスラサック海軍指令官の後任はナロン海軍副司令官が昇格するようです。タクシンはアモンテープ海軍大将を押していましたが、軍側はナロン大将を押していたので通らなかったようです。
現タノンサック国防次官(タクシン派)の後任には、
ジラデット陸軍指令官補佐とニパット国防副次官の二つの噂があるようです。ジラデット将軍はタクシン派ではないようですが、親戚がプアタイ党議員であることから疑惑の目で見られがちです。しかし、彼を押しているのはプラユット陸軍指令官です。
ニパット国防副次官の場合は、明らかにタクシン寄りですね。彼はBRNとの和平協議チームの中心メンバーでもあります。彼はタクシン・インラック首相が強く押していましたが、年功序列を盾に軍側が首を縦に振っていませんでした。もし、ニパット氏が国防次官に昇進したら、南部の協議もまた変化があるかもしれません。
そして、この名簿がインラック首相に提出されましたが、ここで首相は拒否をする権利があります。しかし、それをする勇気と実力が政府にあるかでまた状況が変わってきます。(ただし、今回はインラック首相は国防大臣兼任なので、この名簿は既に承認されたと見るのが妥当だと思います。)
いずれにせよ、首相が署名してから枢密院に送られ、その後国王陛下の承認を得てから正式発表になるので9月まで内容は憶測の域を出ません。
オーディオクリップ流出の件でもわかるように、恩赦法の制定と絡んで水面下で激しい攻防戦が繰り広げられているのでしょうね。
関連エントリ:
恩赦法と軍人事介入9月15日追記:
ニパット氏が国防次官へ10月1日追記:
ニパット氏が就任