和平交渉に表だって進展がないのですが、この間に特別自治区の議論が非常に活発になってきました。
特別自治は以前はタイ政府側に無視された形でしたが、今では様々なアクターによって議論されるようになりました。その一つが「
BRNの独立を目指す過激な一派を抑えるために、より穏健な特別自治を検討すべき」というものです。
ただ、BRN(マレーシア)が考える特別自治とは依然としてかなり隔たりがあります。
非常に簡単に言うとハッサン・タ(ト)ーイブが要求する特別自治は、外交と軍事以外はほぼ全てパタニの地方自治政府が中央の承認なしに運営するもので、当然地元資源の配分も自治政府の比率が圧倒的に高くなっています。(
ミンダナオ自治政府とフィリピン中央政府のケースでは、石油と天然ガス50%ずつ、金属資源は自治政府75%、中央政府25%。BRNの要求はこれよりも高率の8対2。)また、BRNの要求にはサダオ郡も含まれています。これらの条件はタイ政府にとって合意不可能と言っていいでしょう。
反対にタイ政府関係者が考えているのはもっと緩やかな地方分権で、よく例として挙げられるのは、知事が内務省官僚で指名制であるタイの中で、唯一首長を住民選挙で選べるバンコク都やパタヤ特別市です。この二つは制度も違うのですが、より権限の小さいパタヤ型で収めたいという思惑があるようです。(バンコクは多方面型の自治都市、パタヤは経済・観光分野に特化した自治)
そもそも、タイ政府が特別自治地域への議論を始めるのかさえ今の時点でははっきりしません。しかし、非政府のアクター達がいろいろな形で特別自治について議論をするようになり、これが頻繁に(英語を含めた)報道の場に載ってくるようになり、タイ政府へのプレッシャーになってきていると感じます。
非政府のアクターがこのまま流れを作っていけるのか、今後ゆり戻しがあるのか、注目していきたいと思います。