2月27日夜のマレーシアでの和平交渉の署名後一週間の動きについてです。
1.和平交渉開始の合意に署名したが、その後の和解のロードマップが無い。27日の署名時点では、政府が非常事態令を解除するならBRNはその代わりに攻撃を停止するのか、その後どのように和平合意にたどりつくのかといった道筋が全く話し合われていないことが判明。政府はロードマップの作成・提案の必要に迫られています。
合意文書はこちら。2.非常事態令が解除される可能性のある郡は5郡のみで、残りの27郡の非常事態令延長が来週の閣議で承認される見込み。国内治安法(ISA法)のエントリでも書きましたが、わずか5郡の解除ではほとんど意味がありません。21条の効果は全体での国内治安法の適用があってこそです。少なくとも、いつまでにどのような状態になったら非常事態令を解除し国内治安法に置き換えるのか、ロードマップに明記する必要があります。
3.タクシン派のNSCと政府の独断が軍との関係に影響を及ぼしている。軍が署名に反対した理由は
「テロリスト組織を政府と対等の交渉相手として格上げした」ことです。テロリストとは対話はしても交渉しないという姿勢を貫いてきた軍にして見れば、この署名は信じられない行為で陸軍司令官が激怒したと言われています。軍人が中心のISOCは非常事態令の解除と国内治安法の適用に関して大きな力を持っていますが、すでに非常事態令の全郡解除は無理だと政府は認めざるをえなくなっています。これは
容疑者からの情報収集のため非常事態令を維持したい軍の反対のためです。
4.署名への疑念と攻撃が減少しないとの見通しタクシンがマレーシア首相と直接掛け合って署名が実現したとNSC事務局長が明らかにしましたが、その経緯についていろいろな疑念をもたれています。例えば、タクシンがBRNの上層部に対して利益を約束したのではないか、選挙が近いマレーシアが得点稼ぎのためにBRN幹部を脅して署名を強制したのではないか等です。そしてBRNの戦闘員達は今のところ署名だけで具体的な内容がない和平合意に従う理由はないという意見です。
軍をはじめ多くの関係者が今回タイ政府と署名したBRNの統制力に疑問を持っていて今後も戦闘は続くと見ています。実際に武装闘争を行っているBRNの下にある
RKKはもともと自律的な集団で、国外にいるBRNは上層部と言えどタイ国内の戦闘員の動きを全て統制する力はないと言われています。
政府は来週非常事態令を5郡で解除することについて話し合うためにマレーシアで再びBRNに会う予定ですが、それに先立ちNSCの
パラドン事務局長が先日マレーシアに飛んだようです。
その他の動き(3月6日まで)
マレーシア-タイ国境警備強化。4月の人事異動で第4管区司令官に副司令官が昇格の見込み。