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タイ深南部勉強ノート

英語、タイ語、マレー語、日本語からタイ深南部紛争地域の情報をぼちぼち整理しています。 自分用のメモなので時々書き直し、追加あります。

専門家による深南部情勢の解説(2007年)

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専門家による深南部情勢の解説(2007年)

2007年にアジアリンケージがインタビューしたチュラロンコーン大学政治学部スラチャート准教授(元タクシン首相顧問)の深南部問題に関する解説(日本語)です。

6年前の記事にもかかわらず現在の状況と照らし合わせても興味深い内容となっています。深南部に関する我々の疑問にわかりやすく答えてくれていると思います。

以下現在の状況に照らし合わせて私がなるほどと思ったところを抜粋。

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「(スラユット政権の深南部への)“柔軟路線”はまったく機能していない。暫定政権が成立して以来、テロ事件は減少するどころか、急増傾向にあることがその証拠だ。・・・・政府が政治的交渉を提案したといっても、だれと交渉すればよいのかがわかっていない。そこで暗中模索しているうちに、“和解政策”などまったく意に介さない武装勢力は、治安当局による軍事作戦が緩慢になったのをいいことにテロを激化してきた、というのが現状の率直な見方だろう」



「東西冷戦時代、タイ政府は非合法のタイ共産党(CPT)ゲリラに対する掃討作戦を展開する一方で、政治的なアプローチも重視する“柔軟政策”を推進することでCTPの壊滅に成果を挙げたが、当時の政府は、CPT執行部の“フーズ・フー(人物データ)”はすべて入手していたためにそのようなアプローチも可能だった。
 しかし、最南部のイスラム武装勢力に関して、現政府は指導層の顔ぶれはもとより、中核組織の実態もよくわかっておらず、CTPの場合とは事情が異なる」



「最南部の地域社会に情報・諜報ネットワークを構築し、一般住民に紛れて地下活動を行っているグループや人脈を詳しく把握することが急務だ。・・・・・行政当局者が訪問することもできないような武装勢力の実質的な『解放区』が拡大していく中で、現政権は一層困難な状況に直面しているが、明確な対テロ戦略の立案と実施こそが急務であることに変わりはない」



「海外のイスラム諸国から様々なイスラム過激派の思想が最南部に浸透していることは事実だが、個人的には、テロ活動自体は今の段階では地元の分離独立派による反政府武装闘争だとみなしている。・・・・現在のように行政・治安当局がテロの頻発を阻止できない状況が続き、中央政府がますます最南部情勢を管理できなくなれば、中東諸国、南西アジア、あるいはインドネシアなどを拠点にする過激派がさらに深く関与してくるのは必至だろう。
 だから、最南部情勢は時間との戦いになっている。いつまで、地元の問題に留めておけるかということだ」



 「治安当局の内部情報によると、カンボジア人イスラム教徒については、タイに合法的に入国した者だけでも累計で約2万人に上り、そのうち出国が確認された割合は20%にも達していない。多くが最南部に入って不法滞在者になっている。・・・・・これらのカンボジア人の大半は普通のイスラム教徒だとみられるが、中には武装勢力に加わった過激派分子もいるはずだ。
 ・・・・『ロヒンジャ』は、ミャンマー軍事政権に対して長年にわたる武装闘争を展開しており、その中の過激派分子は『アルカイダ』との関係も疑われている。それだけに、海軍幹部を交えた治安当局の最近の会合でも、『ロヒンジャ』の密入国を阻止する対策が検討されている」



 「最南部問題でタイ、マレーシア両政府が協力関係を強化することは必然的ともいえる。私に言わせれば、マレーシア政府が第三者のような立場で“協力”するというよりは、最南部問題の解決は同国自体の国内治安上の重要課題でもあるはずだ。
 最南部に隣接するマレーシアの北部4州(クランタン、ペラ、クダー、プルリス)は、単一イスラム国家の樹立を目指す野党、全マレーシア・イスラム党(PAS)が州政府を握るクランタン州をはじめ、他の地域と比べて反政府的な気運が強いところで、タイの武装勢力に“聖域”を提供する過激派組織も活動している。
 マレーシアは、国境地帯における対テロ政策でタイと連携することが自国の国益でもあることをもっと認識すべきだろう」

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