数日前からインラック首相のマレーシア訪問にあわせて分離独立グループとの話し合いが行われるのではないかとニュースがが流れていました。
そして27日に首相訪問に先立ち
国家安全保障会議(NSC)とBRNが和平合意に署名しました。
歴史的にも初めて分離派組織と公式に和平合意を行ったと報道されていますが、
パラドンNSC事務局長自身も「この合意が紛争終了を意味するわけではない」と述べているように平和のための対話を開始するのに合意しただけでまだいろいろな問題が横たわっています。
BRNはPULOと違って実際に武装闘争を行っているので和平合意は成果ではありますが、
BRN以外の分離派組織も活発に活動しており彼らが和平に同調するかわからないこと、さらに
BRNの中でも様々な分派があり強硬派も存在するということです。そして署名相手のハッサン ターイブの肩書きはBRNマレーシア連絡事務所長でありBRNの実質的なトップではありません。(実際のトップはこの時ブルネイに行っていました。)
もう一つはこの交渉が軍の頭越しに行われたということです。NSCは首相直属の機関で、パラドン事務局長は軍人ですが、タクシン一家と非常に親しいためこの地位に就任できた人物です。
この交渉と署名に関してはNSCとタクシン派の政府が独断で行い軍は直前に知らされた形となっています。軍は分離派との署名に関しては
強い反対を表明しました。
逆に
評価できることは、分離派との交渉を政府が公にしたということでしょう。これまでは政府と軍が別々に分離派と接触しており、それが分離派に懐疑心を起こさせる原因になっていました。また
交渉の内容が公にならなけば相手が合意を守るか第三者機関に監視させることも不可能です。
深南部の問題解決で高得点を稼ぎ、タクシン帰国を前に進めたい政府の思惑が深南部の展開を早める形になっていますが、今後中央で行われているのと同様、政府がいかに軍との関係を調整できるかにかかっているでしょう。そのために政府は深南部問題顧問として、南部と太いパイプを持つ
チャワリット元首相の任命を打診したと報道されました。(彼はソムチャイ政権で副首相を務めましたが、現在タクシン派とは距離をおいています。)
この和平合意が本当に成功したかどうかは、今後の深南部での事件という形ではっきりと現れてくるでしょう。