2日前マレーシアが「ラマダン平和イニシアティブ」というのを発表しました。
ラマダン後を含めた40日間の双方の停戦合意というのが内容で、メディアやテレビでも大々的に報道されています。大体がポジティブな反応です。暴力停止の合意なのですから、当然ですね。
私も、それ自体は大変喜ばしい事だと思うのですが、正直言うとかなり奇妙な合意だというのが感想です。そのため本当に「静かなラマダン」になるのかまだ半信半疑です。
最大の理由は、この合意が「ファシリテーター」のマレーシアによって「のみ」発表されたことです。合意文書をよく見るとわかりますが、最後にマレーシアの名前があるだけで、BRNもタイ政府も署名をしていません。しかも、和平合意「宣言」ではなく、「共通理解」(common understanding)という控えめな表現を使っています。
最初の和平協議開始の時は署名式までして華々しく報道したのに、これはどうしたことでしょうか。
数日前にマレーシアが発表をキャンセルしたと書きましたが、この時点では発表できる状態にはなっていませんでした。この時は、タイ政府(パラドン事務局長)が困惑したと報じられました。伝えきくところでは、今回はタイ側とBRN側が直接顔を合わせて協議したわけではなく、間にマレーシアが入って双方の意見を交互に伝えるという方法が取られていたようです。ということは、タイ側はBRNの反応を直接知ることはできなかったはずです。
これは憶測ですが、マレーシアはBRNを完全に説得できなかったため、一方的にマレーシア政府の名前で発表したのではないでしょうか。そもそも最初の和平協議の開始合意の時からマレーシアはBRNに圧力をかけていますが、今回も彼らの領内での保護をちらつかせて説得を試みたが、BRN側は同意せず、仕方なく(BRNに後で圧力をかける意味もあり)マレーシアの名前で発表することにした、というのが実際に近いのではないかと思います。だとすると、双方の署名がないのも腑に落ちます。タイ側だけ署名させるわけにはいかないからです。
結局、和平合意文書が出た出ないより、今後どれだけ双方が自制して暴力を減らすかという「事実」の方が重要なように思います。この和平合意に期待できるのは、双方が合意したという既成事実が抑止力になる可能性がある、ということだけです。
さらに、この期間停戦したからと言ってそれが必ずしも進歩を意味するわけでもありません。
治安当局側は、この期間中タイ側のセキュリティが緩くなるため、その隙をついて分離派が武器弾薬を各地に移動させ、ラマダン後により激しい攻撃を行うための準備をする余裕を与えてしまうことを懸念しています。
こうした現象はベトナム戦争の和平交渉の際にも見られたそうです。ある一定期間の停戦合意が成立しても、その間双方が体制を整えて次の戦闘に備えるため、その期間が過ぎるとより戦闘が激しくなったそうです。
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